アフガニスタンでは何が起きているの?
ネットの動画で、飛行機に人がたくさん集まっていたけれど何が起きていたんだろう?
#Kabul Airport Today.#Afghanistan #Kabul #Talibans #TalibanTakeover #AfghanWomen #AfghanistanCrisis pic.twitter.com/WF5NOjPwFR
— Aśvaka - آسواکا News Agency (@AsvakaNews) 2021年8月16日
Not a scene of Hollywood, it’s Just #Kabul air port, people want to run away, after the Capture of Kabul by the #Talibans #Afghanistan
— Aśvaka - آسواکا News Agency (@AsvakaNews) 2021年8月16日
By: @Mukhtarwafayee pic.twitter.com/ZLYieJm9mX
Asvaka News twitter
アフガニスタンを統治していたガニ政権が崩壊しました。
以前、国を支配し国民を苦しめたタリバンが再び政権の座に就くこととなり、逃げ出そうとして多くの人々がパニックになっています。
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは15日、首都カブールに入り、全土をほぼ制圧、大統領府を占領したと宣言した。ロイター通信などによると、ガニ大統領は同日、国外に逃れ、タリバンによる権力掌握を認める声明を発表した。2001年の米中枢同時テロを受けた米英軍の攻撃で旧政権が崩壊して以来、20年ぶりにタリバンが復権した。
アフガニスタンってどんな国?
Afghanistan Japan Locator by Spesh531 is licensed under CC BY 3.0
アフガニスタンは、日本からおよそ6,300キロ*1西に位置する、中東*2の国です。
中国(新疆ウイグル自治区)・パキスタン・イラン・トルクメニスタン・ウズベキスタン・タジキスタンの6つの国に囲まれる内陸国で、パシュトゥン人、タジク人、ハザラ人、ウズベク人などの人々が住んでいます。国民の多くはイスラム教を信じています。
18世紀中ごろに、パシュトゥン人の王「アーメッド・シャー」による統治がなされましたが、インドを植民地にしていたイギリスと南へ勢力を伸ばしたいロシア(ソ連)の列強の争いに巻き込まれます。
以降、争いが絶えない国となってしまいました。
戦乱が続いたため、世界の中でも発展から取り残されている国*3の一つです。
中村哲さんをはじめ多くの日本人もアフガニスタン発展のために働いているよ
specials.nishinippon.co.jpwww.mofa.go.jp
日本からランドセルを送る活動もあるみたい
www.joicfp.or.jpタリバンってどんな組織?
タリバンは、1996年頃から2001年にかけて、アフガニスタンを統治していた組織です。
統治していたのに何で追い出されたの?
きっかけは、2001年に起きた、アメリカ同時多発テロ事件でした。テロ組織「アルカイダ」がアメリカで同時に起こした事件で民間の人も多く犠牲になりました。ニューヨークにある、世界貿易センタービルに飛行機を突入させたことが世界中にショックを与えました。
見ていられない…
※動画にはショッキングな内容が含まれますwww3.nhk.or.jp
「アルカイダ」のリーダであったウサマ・ビン・ラディンは、アフガニスタンにいました。アメリカはタリバン政権にウサマ・ビン・ラディンの引き渡しを求めましたが、拒否され攻撃に踏み切ります。
また、タリバンを反発する勢力がアフガニスタン国内にいました。アメリカの攻撃に乗じ、彼らが首都カブールを制圧。タリバンは隣国パキスタンの国境付近に逃れます。
なんでタリバンに反発する勢力がいたのだろう、それにビン・ラディンも引き渡せばよかったのに
タリバンは、政権を取るまで内乱によって無法状態になっていた地域に秩序を取り戻し、道路を作ったり、安全を確保して、商売を活発にさせるなどの働きをして国民から支持を集めていました。しかし、シャリア法*4の独自な解釈を行い、それに沿った厳しい制度を導入します。
例えば、殺人を犯した人は公開処刑。窃盗などで有罪となった人の手足を切断するといった残酷な罰則や
男性はひげを伸ばす、女性は全身を覆うブルカの着用を義務付けるなどです。
また、テレビや映画、音楽を禁止、10歳以上の女の子が学校に通うことも認めませんでした。
勉強しなくていいのかもだけど、音楽が聴けなくなったり、映画が見れなくなるのは…
最初は支持していた国民もこれらの行動により支持しなくなりました。タリバンの敷いた体制は、アフガニスタン国民の人権や文化を侵害してると指摘され、多くの国から非難されます。国として認めていたのはパキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の3か国のみで、国際的に孤立してしまいました。
一方、政権を取ったといえど、一部地域では反発する勢力と戦いが継続していました。
圧政の影響で、タリバンには兵が集まらず、国民を無理やり兵隊にする「徴兵制」を敷かざるをえなくなるほどでした。
タリバンの兵士不足を埋めたのが、アラブ人の義勇兵です。ウサマ・ビン・ラディンもその流れでアフガニスタンに入国します。
孤立していた時の仲間で借りがあったのね
ウサマ・ビン・ラディンはアラブ人で、父親がサウジアラビアの王室をお得意様にしていた建設業者であり、巨額の資産がありました。彼は湾岸戦争によってイスラム教の聖地を持つサウジアラビアが異教徒(キリスト教を信じる人が多い欧米諸国)の出撃基地となり、イスラム教徒の国(イラク)を攻撃したことに激怒し、アメリカを対象としたテロにのめりこみ、自身の資金を元手に「アル・カイダ」を結成したのです。
タリバンは何で戻ってきたの?
一つめの理由は、タリバンを根絶やしにできなかったからです。
タリバンは、隣国パキスタンの国境付近で戦力を整え、2002年には武装活動を再開します。
その後、アフガニスタンの南部を中心に政府を追い出して支配地域を手に入れます。それが、次第に拡大していきました。
たとえば、アフガニスタン人の山賊がパキスタンで誘拐事件を起こし、身代金を要求。犯人たちはアフガニスタンに逃れるため、逮捕ができないといったことがありました。
また、パキスタンとアフガニスタンの間にはまたがる地域に住む、パシュトゥン人の独立運動がありました。
出典:The four major ethnic groups of Pakistan in 1980 アメリ中央情報局 (パブリックドメイン)
図の緑色の地域がパシュトゥン人が住む地域です。アフガニスタンの混乱に乗じて独立運動が盛り上がってしまうと、パキスタン北西部地域の独立運動にも影響してしまいます。
これらの問題をどうにかしたいパキスタンには、アフガニスタンに自分たちと仲良くしてくれて、治安を安定させる勢力が必要でした。そのため、タリバンという組織を支援したといわれています。
もともと親しい関係だったから、やっつけることができなかったのね
二つめには、アフガニスタンの政府が寄り合い所帯であることが挙げられます。
冒頭で書いた通り、アフガニスタンには様々な民族がすんでいます。その民族が多く住む地域ごとに力を持った人がいます。タリバンが政権を取る1996年以前、無法状態になっていたのも、誰がリーダーとなってまとめていくか、これらの人の考えがまとまらなかったためでした。2001年に政権を取るまではタリバンという共通の敵を倒すことでまとまっていましたが、政治のかじ取りをする場面になると、改めて誰がリーダーになるか、利益の配分などでもめてしまったのです。
結局、以前の争いが解決していなかったのね
三つめは、アメリカの撤退が挙げられます。
アフガニスタン政府が強いリーダーシップを持てず、タリバンが再び支配地域を拡大する中、アメリカはアフガニスタンの現政府とタリバンを仲介して、一つの政府を作り上げようとしていました。
今までは、タリバンと強い敵対関係にあったアメリカでしたが、タリバンが勢力を盛り返した2010年代後半から和平に向けた交渉を重ねてきています。
その中でタリバンが、アメリカに提示した条件が「アメリカ軍の撤退」だったのです。
2020年2月には、タリバンとアメリカの合意が成立し、徐々にアメリカ軍の人数を減らしていき、2021年の9月には撤退する予定となっていました。
今後はどうなるの?
タリバンが再び政権を握ることは間違いないとの見方が広がっています。
そこで、注目しなければならないことは
タリバンが再び国民に厳しい政策をとるのか
タリバンとテロ組織(アルカイダ)とのつながりはどうなるのか
タリバンと敵対していた勢力との関係はどうなるのか
などが挙げられるでしょう。
また、以前は3か国しかタリバン政権のアフガニスタンを認めていませんでしたが、ひょっとすると今回は数が増えるかもしれません。
どうして数が増えるかもしれないの?
テロリストさえどうにかしてくれれば、国として認めてあげてもいい。国として互いを認めれば、貿易商売をすることができる。と思う国があるかもしれません。以前タリバンが政権を取った時、世界の経済はアメリカを中心に回っていました。そのためアメリカが「国民に厳しい政策をとる政府は認めない」と言ったら、ほかの国もアメリカと商売ができなくなったらこまるので、アメリカにならっていました。
ところが、今はアメリカだけでなく中国も経済の中心となりつつあります。「アメリカに従わなくても、中国に従えば大丈夫」となれば新しいタリバン政権を承認する国は増えるかもしれません。
もっとも、中国がタリバン政権を承認するかがポイントとなります。中国はアフガニスタンの隣国でもあります。当然アフガニスタンの安定を望んでいます。
「アフガニスタンの状況が安定さえしてくれれば、国内の状況には目をつぶろう」と中国が思えば承認するのではとの見解*5も存在します。
いずれにせよ、タリバンがどのように政府を運営していくかに注目が集まります。
アフガニスタンの人々が平穏に暮らせる未来になりますように…
参考文献など*6
- アフガニスタン史 河出書房新社 2002年
- アフガニスタンの歴史 明石書店 2002年
- 知ってほしいアフガニスタン 高文研 2009年
- アジア動向年報(2002年―2021年) JETROアジア経済研究所 2002-2021年
- 米とタリバンが撤退で合意 アフガン大統領「捕虜交換の約束ない」 BBC 2020年3月2日
- 【解説】 タリバンとは何者か 米軍撤収のアフガニスタンで復権 BBC 2020年8月16日
- 池上彰が明かす!イスラムビジネス入門 パキスタン編―教育編 JICA
- アフガニスタン・イスラム共和国 基礎データ 外務省 2021年5月14日
- 中国「アフガン新体制承認はまだ」 タリバン対応見極め 朝日新聞 2021年8月18日
- タリバン | 国際テロリズム要覧2020 | 公安調査庁